考えの調理場

不登校から教員免許取得。【反復性うつ病性障害&強迫性障害】女の、考えの調理場。

数カ月でわかってきた絵の具のこと

透明水彩絵の具を入手してから、今月で一年経った 小柏まき です。

がっつり不登校だったため中学校の美術の授業を受けたことすらないのですが、昨年8月に固形水彩12色セットを購入して触ってみ始め、試しに絵を描いてみるまでに数十日かかりました。

その後、暫く自分なりに絵を描いてみて、絵の具の扱い方・絵の描き方がわかってきたような気がします。

わかってきたような気がするというのは、自分がどういう風にわかっていなかったかに気づいた部分があるからです。

 

 

まず、セットで売られている絵の具のチョイスが解せませんでした。

ここには、三原色が入っていないことと、白が入っていることの2つの要素がありました。

 

 

どうして三原色のシアン・マゼンタ・イエローという絵の具が入っていないのかと、なんだか不思議に感じていました。絵の具のブランドHPなどを見ても、単純な「シアン」などの絵の具がラインナップされていないことが何故なのかとわかりませんでした。

一色の色にもカタカナで長い名前が付いていて、ちんぷんかんぷんでした。

しかし調べていくうちに、その長い名前には意味があるのだと少しずつ知りました。そして、それはその絵の具が何から出来ているかを示していたりするのだとわかってきたのでした。

 

そもそも、私の絵の具に対する概念自体が間違っていたのです。

絵の具も元をたどれば自然の植物や動物や鉱物なのです。

頭では知っているつもりでした……。企画展で見たフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』のターバンの青は、ラピスラズリを粉状にしたもので色を出していることも。草木染を体験したことがあるのだから、布を染色するのに植物を使うことがあるのも。数年前までアイシャドウの黄色い粉はパサついたものしかなかったのに、近年ではテクスチャーと発色が進歩していることも。

絵の具だって、何もないところからヒトの手で生み出されているわけじゃなくて、既に存在している物質の一部を使ったり加工したりしているのだということ。それがやっと感覚的に理解できたのでした。

 

三原色の絵の具があればいいのにと簡単に考えていましたが、たまたま三原色のうちの一つの色をした物質が採れなければ、有る物質を合わせてどうにか作らない限り存在しないわけです。

そして自分の考え方がどうしてこう安直になってしまったのかと考えてみると、3年ほど前にスマホを手にしてからデジタルで絵を描くことが多かった影響なのかもしれません。

 

 

f:id:ogasiwa_maki:20210819200150j:plain

ひとつだけ開封してもらえない白……

 

それから、透明水彩絵の具の白の存在。

水彩絵の具に[透明水彩]と[不透明水彩]があることを知ってから、得る情報のどれもが透明水彩では白を表したいときに紙の色を活かすというものでした。

白いところは何も塗らずに塗り残す、だとしたら白みのある色を作るときに混ぜる必要もないのではないかと思いました。つまりピンク色にしたいところには、赤と白を混ぜて塗るのではなく、赤を水で薄く溶いて塗ればいいではないかと。

いよいよ12色セットに入っている白の存在価値がわからなくなりました。

 

絵の具の話題を扱っている記事を読み、動画を観て、知っていそうな人に質問を投げかけたりもしました。

白は白でも透明感ではなく重厚感が欲しいときに塗るという人もいました。広い面をベタ塗りするときに混ぜて均一にするという話もありました。

 

重厚感が欲しい場合、例えば白い陶器の花瓶を描くとき、白い紙の上に透明水彩の白を塗っても見た目に変化を期待するのは難しいと感じました。白い陶器を透明水彩で表現するときには、その白が青みか黄みか或いは赤みか見極めてそういう色を薄く塗るのがいいと思います。白をこってり塗りたいときには、不透明水彩の白の方が下地を覆い隠す力が強いので向いていると考えるからです。

 

それから、広い面をベタ塗りするという場面が、透明水彩で描きたいときにあるのかどうかよくわかりませんでした。

今になって思えば「ベタ塗り」という言葉から、完全に均一な塗りを思い浮かべてしまったからイメージが湧かなかったのでしょう。例えば薄い色の青空を描くのに、私は青い絵の具を水で薄く溶いて塗っていました。シャバシャバした色みず状のものは扱いづらく、水分が蒸発してくれば即座に濃く発色してしまいます。そういう場合に白い絵の具を混ぜることで水っぽさを控えて色をコントロールすることができるだろうということが、絵を描いていくことでわかってきました。

 

今の私が、透明水彩絵の具を手に取りたての頃の私に、白の用途について助言するとしたら「透明水彩の白は彩度を下げるためにある」と言うでしょう。他の色と混ぜたり、他の色を塗った上に重ねたりすることで、他の色の鮮やかさを抑える役割があるのだと思います。

白い絵の具は白い物のためではなく、他の色をほんのり変えるためにあったのだと今は思っています。