考えの調理場

不登校から教員免許取得。【反復性うつ病性障害&強迫体験】女の、考えの調理場。

青い万年筆~歳月を超えて~

高校時代、基本的に毎日万年筆を使っていました。

毎日、万年筆で文字を書かせる、そういう独特な高校に通っていたのでした。入学そうそうに「使い捨てでない、カートリッジ交換できるタイプの万年筆を持って来なさい」と言われました。

当時は万年筆なんて、書店に置いてある少しの文房具コーナーには置いていませんでした。というか、そういう気軽に手に取れるような価格帯のものではありませんでした。

事務や製図を生業としているような人が行くお店が、たまたま隣町にあって、そこでウォーターマンというブランドの万年筆を調達しました。3千円くらいだったと思います。その万年筆は半透明で、従来の万年筆の重厚感があるイメージをいい意味で覆してくれるスタイリッシュさがありました。店員さんに訊いてみたところ、何色か種類があるそうなのですが、取り寄せずに手に入る在庫は1色だけでした。それは少し緑がかった黄色でした。私は本当は断然、青が好みだったのですが、すぐに必要だったので仕方なく購入しました。

それからというもの、悪戦苦闘しながらその黄色い万年筆を使うことになるわけです。筆圧が強かった私にはウオーターマンの柔らかいペン先が使いやすくて、何カ月も使っているとだんだん慣れてきて、文字が思うように書けるようになっていきました。そうやって黄色い万年筆は私の愛用品になりました。もはや、クラスの誰の万年筆よりも自分のもののほうが素敵に見えてきて、「やっぱりこれにしてよかった」と、物との出会いを嬉しく思うようになりました。と同時に、「いつか色違いの青い万年筆が欲しいな」「今はひとつあれば充分だから、大人になったら買おうかな」なんて気持ちが湧いてくるのでした。

 

そうやって、私が生まれて初めての万年筆を手に入れてから、一年以上が経過しました。ほとんど毎日使っていたのでインクの消耗も激しくて、その頃都会へ通勤していた父親が、いつも少し余るくらいのペースでインクのカートリッジを箱買いして来てくれるのでした。

そんなある日、父が突然「せっかくだから予備があったほうがいいだろう」と万年筆を買って来てくれました。私が新しい万年筆をねだったことはなく、「え?なんで?本当?」というのが最初の感想でした。その次に、嫌な予感がしました。そのサプライズ・プレゼントを父から受け取って見てみると、それはやはりウォーターマン“黄色い万年筆”でした。愛用品とまるっきり同じもの、同じ色です。父は私が元々は青い万年筆が欲しかったけれど仕方なく黄色で手を打ったことなんざ、忘れている……というより知らないのです。平常運転です。「青がよかったのに~」と言うと、「ああ、青いのも売ってたよ」という謎の報告をしてくれました。とはいえ、せっかくのプレゼントで、しかも愛用品の予備として使い回せば片方を洗浄していてももう片方は使えるわけで、有難く頂きました。

 

あれから月日が流れ、今の時代は昔と比べて質の良い物が安い価格で手に入るようになりました。

私自身も歳を重ね、万年筆らしい重厚感のある万年筆にも魅力を感じるようになりました。

 

というわけで、先日ついに買ってしまいました。“青い万年筆”を。

こちらです。

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つるっとしたボディは、深みのある青で、螺旋状の黒が飽きさせない、とても魅力的な見た目です。さっそくインクを入れて書いてみましたが、書き心地も満足です。

これ、いくらに見えるでしょうか?

 

ダイソーの500円商品でした。いや、もしかしたら世の中的には有名で私が知らなかっただけかもしれませんが、時は流れ・技術は進歩していくものなのだなと感じざるを得ませんでした。

高校時代にこんな商品があれば、もどかしくも可笑しいエピソードも生まれなかったのだと、思わずにはいられませんでした。