趣味でときどき絵を描き、Twitterにイラストを投稿したりする、 小柏まき です。
Twitterでフォローさせてもらっている うつ病ブロガー たぐさんのツイートを見たことが、今回の行動のきっかけでした。
それは、ブログで使うプロフィール用のイラストの描き手を募集しているという内容でした。
【イラスト作成依頼】
— うつ病ブロガー たぐ (@tagweblog) 2020年2月22日
精神的な病気で休職または離職中の方で、イラストを作成していただける方を募集しています。下記にご依頼の詳細を記載しているので、興味のある方は、ページをご覧ください。
‣求職・離職中の方向け【イラスト作成依頼】ブログのプロフィール用https://t.co/LZaagF9cTf
募集内容は、うつ病などの精神疾患で、現在働くことができていない人を対象としたものでした。うつ病ブロガーたぐさんは、ご自身の経験から うつ病で療養中の人向けに情報発信したり仕事の機会を提供する活動をなさっている方で、プロフィール用イラスト制作者の募集もそのひとつなのでした。
元々絵を描くことが好きな私はすぐに、チャレンジしたいと思いました。
しかしながら、応募するまでには幾つかのハードルがありました。
目次
不安の正体
まず、私自身の画力に関する不安。次に、持病による不安。そして、知識も経験もないという不安。不安の正体は、大きく分けてこの3つでした。
画力に関する不安
絵を描くことが好きでも、学生時代に課題で描いた以外には、趣味として気ままに描くことしかしていませんでした。
私なんかが描いた絵は、報酬を受け取る価値が無いのではないか。という気持ちが、最初は強くありました。
今回の企画でよかったのは、応募した中から依頼される人にのみ返信があるということでした。
応募者側からは、自分以外の人の応募状況がわかりません。これで、他の人と自分の絵や画力を比べようがありません。また、返事が貰えれば、「応募者が一人しかいなかったから仕方なく選ばれたに過ぎない」などの考えは妄想でしかなく、選んでもらったという事実しかわからない、ということでした。
持病による不安
私は、うつ病治療中ですが、その根本には社交不安障害や強迫性障害があります。
何かを誰かとやり取りして進めていくには、コミュニケーションを避けては通れません。今回はTwitterのDMでやり取りをしました。口で喋ってしまえば数秒で済むようなことも、文字にすると長くなるものです。「大したことではないけど少し気になる」という程度のことは訊いてみるべきか否か、いちいち迷ってしまいます。また、やり取りの中で自分が実は大きなミスを見逃しているんじゃないかという不安が湧いてくるので、私は毎回スマホのメモにDMで送りたい内容を作文して、それをコピペして送っていました。作文の段階で落ち着くために一旦スマホから離れて、時間を空けることもありました。
返信に時間がかかること・制作期間中に具合が悪い日が来るであろうこと、これらが私自身気にならないではありませんでしたが、依頼人のたぐさんが精神疾患に理解があると信頼を置き甘えさせてもらうことにして、自分にプレッシャーをかけ過ぎないようにしました。
知識も経験もない不安
趣味で絵を描くのは、自分が満足するためです。ところが、依頼を承るというのは相手のあることです。
今までに依頼してもらって絵を描いたことがない私には、どういったやり取りや決め事が必要なのかもわかりませんでした。また、絵の値段相場もよく知らないため、どういったスタンスで取り組めばいいのかもピンときませんでした。
イラストレーターさんや絵師さんと呼ばれる人は、一つの作品に対してどれくらいの報酬を受け取っているのでしょう? どうやらこの話題は、いろいろな場で議論の対象とされているものらしくネット検索すれば情報は出てくるものの、確たる正解があるものではなさそうです。
どうしたものか、と思った私は、人に頼ることにしました。絵を描く他の人は、この募集についてどう思っているのか? と、相談させてもらいました。
すると一人の方が、「イラストの報酬としてこの値段は高額なほうではない」と教えてくれました。経験的知識のある方の正直な言葉に、無知な私は目から鱗が落ちました。私は自己評価が低いあまりに、一般的な情報を得ても自分に適用することができなかったのです。簡単に言うと、他の人が描いた絵には相応の価値が発生して然るべきだと考えるのに対して、自分の描いた絵には “そんな価値は無い” という思考に陥ってしまっていました。どうやら、認知の歪みがあったようです。
応募から受注・制作
DMで自己紹介・自己PRをして、ご依頼いただく運びとなりました。
具体的な絵のイメージは、「横顔か、視線を少し外したようなイラスト」「雰囲気としては、男性が考えている感じ、ちょっと物思いにふけっている感じで、優し気な雰囲気が出せたらいいと考えています。」とのご要望でした。
制作期間は2~3週間、ということで、3週間後には最終的な完成版をお渡しすることになりました。
気になることがあればご相談しながら、進めていきました。
時間的には充分余裕がある印象だったので、肩に力を入れ過ぎずに少しずつ……やっていきたかったのですが、それが難しいことに気づくのは数日経ってからでした。
0か100か
自分では気合を入れているつもりも頑張っているつもりもなく、むしろ小さな力で時間をかけてやろうと思っていながら、絵に取り掛かってから気がつくと完全に集中していて、何時間も経っているのでした。そしてそこには、やった分だけ進んだ絵と、ヘトヘトに疲れた自分が居るのでした。
少し長い距離を走るために、軽いジョギングを続けていきたいのに、目の前に走るべき道があると全力疾走してしまい、短距離で休憩しなければいけなくなるのでした。
車の運転に例えると、軽い力でアクセルを踏んで程よいスピードで進むことが、出来ていないのです。
私は疲れを感じた日や、ポジティブな気持ちで描き始められない日には、絵には全く手を付けないことにしました。
本当にこれでいいのか
段々と完成に近づくにつれて、本当にこれでいいのだろうか? もっと出来ることがあるのではないか? と考えるようになりました。
そこで、「提示された報酬額が仮にもっと高額だったなら、きっとそれに見合うために努力をしなければいけないような気持ちになっただろうな」と想像しました。そうです、多分この報酬の提示額は、必要以上のプレッシャーを感じさせないために設定されたものなのだと、思い至りました。
完成
最初のDMを送ってから15日後に出来上がった絵はこちらです。
このイラストをお使いいただいたブログ記事はこちら↓
私のこともご紹介くださっています。
感想
やはり、絵を描くのは楽しかったです。楽しみながら出来上がったものを、お使いいただけるのは嬉しいことです。
私自身、反復性うつ病性障害と社交不安障害と強迫性障害で、低い自己肯定感をどうにか高めていきたいと考えているタイミングでもありました。
たぐさんの今回の企画と出会えて、好きな “絵を描くこと” で認めてもらえて、自己実現というと大袈裟かもしれませんが、とても励みになりました。
自作のもので金銭を受け取るなんておこがましいと最初は思っていましたが、その価値があるものをご提供できればと、いいやり甲斐になりました。
たぐさんとのやり取りでは、お褒めいただいたり喜んでくださったりして、終始うつ病患者の個人に対するお気遣いを感じました。
報酬額のお心遣いも有り難く、有意義に使わせていただこうと思います。
この度は本当に有難い機会に恵まれたと、関わってくれた方々に感謝しています。
自己肯定感を上げるにはどうすればいいか、自分はどう社会参加することができるのか、まだまだこれからも手探りが続くと思いますが、こうした小さなハードルを幾つも越えていくことで “強い自己否定感” を薄めていけたらいいなと考えています。